2015年7月19日日曜日

日本と韓国に見る体制クーデター論:安全保障関連法案の採決と朴槿恵現象

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ビデオニュース・ドットコム 7月18日(土)23時10分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150718-00010001-videonewsv-pol

あれは安倍政権によるクーデターだった
/石川健治氏(東京大学法学部教授)

 あの日、日本でクーデターが起きていた。
 そんなことを言われても、ほとんどの人が「何をバカな」と取り合わないかもしれない。
 しかし、残念ながら紛れもなくあれはクーデターだった。
 そして、それは現在も進行中である。

 安倍政権は7月15日の衆院の委員会で安全保障関連法案の採決を強行し、翌16日には本会議を通過させた。
 国会の会期が9月27日まで延長されていることから、仮に参院が法案を議決しなくても、衆院通過から60日後には衆院の3分の2の賛成で法案は可決する。
 衆院では自民、公明を合わせると3分の2以上の議席を得ていることから、16日の衆院の通過を持って、事実上法案の成立は確実になった。

 これは一見、民主主義の正当な手続きを踏んでいるように見えるが、決してそうではない。
 今回日本の政治に起きたことは、後世にまで禍根を残すことになるだろうと東京大学法学部教授で憲法学者の石川健治氏は言う。

 その理由として石川氏は今回、安倍政権が、憲法を改正しないまま、長年にわたり憲法によって禁じていると解されてきた集団的自衛権を容認する法解釈と法整備を強行したことによって、
 「法秩序の連続性が切断された」と考えられるからだ
と説明する。

 元々安倍政権は憲法9条を改正して、日本も軍隊を持ち戦争のできる「普通の国」にしたいという野望を抱き、それを公言して憚らなかった。
 しかし、それを実現するために必要な国民の支持がないことがわかると、今度は憲法改正を困難にしている憲法96条を改正し、現行の3分の2から国会の2分の1の賛成で憲法改正を発議できるようにしたいと言い出した。

 憲法の条文を改正する手続きを定める憲法96条は、憲法の中では他のすべての条文よりも高い位置にある。
 それを壊す行為は憲法そのものを転覆させる行為であり、これを法学的には「革命」と呼ぶが、「革命」が成功するためには国民の支持が必要だ。
 しかし、日本国民は憲法96条の改正を支持しなかったため、「革命」は失敗に終わった。

 ところが安倍政権は今度は、国民を置き去りにしたまま、政府レベルで法秩序の連続性の破壊を図った。
 内閣法制局長官を集団的自衛権容認論者にすげ替え、集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、政権与党のみで法案を国会を通してしまった。
 国民から支持を受ける「革命」に対し、国民を置き去りにした状態で法秩序の連続性を破壊する行為を、
 法学的には「クーデター」と呼ぶ
のだと、石川氏は言う。

 石川氏は今回日本が失ったものの中で、最も大きかったものは
 「理屈が突破されたこと」
だったという。
 参考人として呼ばれた3人の憲法学者にことごとく違憲の烙印を押され、憲法学者はもとより世のほとんど学者も、歴代の内閣法制局長官も、こぞってこの集団的自衛権を認めるこの法案は違憲であると主張していた。
 こうした主張に対する政府・与党側の反論は、集団的自衛権とは何の関係もない砂川事件の最高裁判決で集団的自衛権は禁止されていないという、およそ屁理屈にもならないようなお粗末なものだった。
 また、今回の法整備によって日本の抑止力が高まるという政府の主張も、根本的な部分に誤謬があることも明らかになった。

 理屈の上では安保法制をめぐる安倍政権の主張は完全に敗北していた。
 しかし、にもかかわらず論理的に破綻している法案が閣議決定され、7月16日の衆院通過で事実上の成立が決まってしまった。

 理が通らない政策が数の論理によって押し切られてしまったことで、日本が「法秩序」を失ったことの影響は大きい。
 今後、この法案がもたらすであろう個別の問題を考えただけでも目眩がしそうだが、より高次元で日本の法秩序が破砕されたことの影響は恐らく安全保障分野だけにとどまらないだろう。
 われわれの多くが、日本という国の政治の頂点で、「理」が「無理」によって押し切られるところを目撃してしまった。
 これによって戦後われわれが大切に育て、守ってきた「公共」空間が壊されてしまった。

 ここに至るまで安倍政権は、解釈改憲を実現するために内閣法制局長官をすげ替えたほか、アベノミクス実現のための日銀総裁人事にも介入した。
 また、メディアへの圧力を強める一方で、NHK会長人事にも介入してきた。
 こうした行為もまた、憲法96条改正の通底するところがある。最終的に法秩序を破壊するような行為を行う上で、まず邪魔になる障害を取り除くために首相の権限をフルに活用する。
 法律で委ねられた権限を行使しているだけとの見方もあろうが、そもそもそうした権限が内閣に委ねられているのは、そうした個々の機関の暴走を防ぐためであり、首相の権力を私物化するためではない。
 それを自身の権力や権限の拡大のために利用する行為は、権力の目的外利用であり、権力の濫用に他ならない。

 今回の安保法制の事実上の成立で日本が失ったものとは何なのか。
 今後その影響はどこで表面化してくるのか。
 われわれはそれにどう対抗していけばいいのか。
 知性主義も立憲主義も否定したまま自身の目的達成に向けて突っ走る安倍政権と、われわれはいかに向き合っていけばいいかを、ゲストの石川健治氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。



ハンギョレ新聞 7月19日(日)7時36分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150719-00021341-hankyoreh-kr

[インタビュー]
朴槿恵現象は旧保守勢力の合法的クーデター


【キム・ドンチュン聖公会大教授】

●.大韓民国の歴史で朴槿恵(パク・クネ)政権の登場が意味を持つのは、
 朴槿恵こそが朴正煕神話を自ら崩壊させたこと、
 それが唯一の歴史的寄与になる
のではないかという話がありますが、本当にそうなるのでしょうか?

★.「今後を見守る必要はあるが、そうなるのではないか…。
 特に慶尚道の人々についてですが、私がコラムに書こうとする中に『構造盲』という言葉があるのですが、
 この世の中を
 構造で見ず、人物で見ようとする韓国社会の後進的政治意識、政治文化
を意味します。
  60代以上の人々は多くが構造盲ですが、李明博(イ・ミョンバク)と朴槿恵がそれぞれ異なる党の所属だと勘違いしている人々、政治的因果関係を見ることができない人々、大統領の権限は相変らず強大だと見る人々が問題でしょう。
 朴槿恵は政権再創出に全てを賭けた保守支配勢力に乗せられていると見ています。

 結局、朴槿恵現象というのは10年の民主政府時期に剥奪感を感じた旧保守勢力の反乱
ですが、私に言わせれば
 徐々に進行するクーデター、合法的な枠組みを持ったクーデター
と言えます。
 これが過去の旧保守と異なる点は、10年の民主勢力執権時の剥奪感のために、それだけアップグレードする過程で
 自分たちの代表として李明博と朴槿恵を座らせたという点
でしょう。
 私たちはそのことをよく見なければなりません。

 私は朴槿恵に焦点を合わせることは世の中を正しく見えなくさせる、すなわち問題の焦点を曇らせることだと考えます。
 朴槿恵現象は退行的現象です。 
 李明博、朴槿恵が合理的保守として進化できず、再び反共保守を抱きしめたということが韓国の歴史の大きな悲劇だと考えます。
 その脆弱性が、グラムシの表現を借りればヘゲモニーの不在ですが、二人はお金もあって、財閥側もみな彼らの側で、韓国社会の知識人や言論人もそちら側が圧倒的に多いじゃないですか。
 上手くやれば進歩勢力を完全に孤立させることだってできますね。
 いわゆる少数の進歩勢力を完全に孤立させ、上手くやれば全体的に保守がヘゲモニーを確実に掌握できるという話でしょう。
 本当に人々が心から沸き出るように保守を支持できるようにすれば良いのに、こういう粗悪な市場論理、このような形の無茶苦茶な市場論理ではなく、極めて合理的な市場論に立って公正な法治を確立し、公安機関が好き勝手に横行しないようにしながらも、いくらでも報道機関まで飼い慣らすことができる筈でしょう。 ところが、そのようにする能力がないのです」

●.無期停学の後、復学はいつでしたか?

 「1年間でした。
 以前ハンギョレにいたチン・ジェハク氏、彼は私と同じ境遇でしたが、警察署に2回逮捕されれば除名だったのですが、私は1回連行されたので無期停学を受けました。
 同じ事件なのに…。
 除名された人々は朴正煕は死ぬまで復学できませんでした」

★.1年間の無期停学は、学校や当局としては少し苦労してみろ、言ってみれば身を引きなさいということでしたが、むしろその時が本格的に運動圏の学生を作った養成期でしたね。

 「そうなりましたね。
 東学農民革命以後120年続いた植民地、分断、西欧追従の近代化と物量主義の成長パラダイム自体を根本的に再考する時間になったと思います。
 今がまさにそのような時だという気がします。
 120年前の状況と今はとてもよく似ています」

 キム・ドンチュン聖公会大教授がこれほどざっくばらんに(?)自身の思いにまつわる話を打ち明けたことが今まであったかはよく分からない。
 今年初め、ハンギョレ新聞社は本格的な書評雑誌の発刊を準備して、創刊号の特集の一つとしてキム・ドンチュン教授とのインタビューを推進した。
 今年が光復(解放)70年(事実上、分断70年)であることに加え、韓日協定締結50年になる節目の年なので、韓国社会変革のための正しい進路摸索と変革主体の形成に格別な関心を傾けてきた社会科学研究第3世代の先頭走者である彼に会って、韓国社会の過去、現在、未来に対する考えを聞いてみようとした。

 インタビューは2月6日にハンギョレ新聞社本社で、2月12日に聖公会大学のキム教授の研究室でそれぞれ一回ずつ行われ、正式なインタビューではないが、その他に一度別に会って内容を補充しもした。
 その内容の一部が「私たちの経験で世界を説明する一般理論を作らなければならないですね」というタイトルで4月16日(17日一部修正)ハンギョレの「現在執筆中」の連載(第5回)紙面に紹介された。

 当時、キム教授は「解放70年の大韓民国はどんな国なのか」(仮題)という本を書いていたが、その話からインタビューを始めたが話はその枠を軽く越えてかなり遠くまで行った。

 ところが、その二回のインタビューをきちんと整理する余裕を持てない中で、不本意な事情で書評紙作業は3月にひとまず中断された。
  したがってインタビューも死蔵される状況に置かれた。
 幸いなことにその一部を追加取材で補完して「現在執筆中」に載せたが、多くの内容を伏せておかなければならないことに対する物足りない思いが強かった。

 その後、時間がやや過ぎたが、今回デジタルニュースチームと協議して内容全体を紹介できるようになったことは、不幸中の幸いだ。
 時間が過ぎてもインタビューした当時の問題意識と内容自体の時宜性は落ちていないと考える。
 二度のインタビューのうち、後から行った2月12日のインタビューから先に掲載する。 内容はほとんど修正も加工もしない“生”のものなので、荒っぽい感じを与えるかも知れないが、むしろそれゆえに一層迫ってくる部分もあるだろう。
 2月6日のインタビューも続けてまもなく公開する予定だ。(訳注:本文は2万文字程度の長文です)

ハン・スンドン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )


レコードチャイナ 配信日時:2015年7月22日(水) 5時36分
http://www.recordchina.co.jp/a114530.html

安倍首相「支持率のために安保法制をやめるのは本末転倒」
=韓国ネット「安倍首相は尊敬に値する!」
「国民の反対を押し切ることこそ本末転倒」

 2015年7月20日、韓国・聯合ニュースは、
 「安倍首相は支持率が下落しても、安全保障法案を強行採決することを示唆した」
と報じた。

 安倍首相は20日、日本のテレビ番組に出演し、安全保障法案を与党が強行採決したことで支持率が急落したことについて、
 「支持率が大事だからやめてしまうのか、という議論は本末転倒だ。
 支持率はとても大切だ。
 国民の理解や信頼を得ているか。で
 もそのために政治をやるとなったら、事実上、人気だけを目当てにした政権になってしまう」
とし、
 「支持率だけを大切にするなら、そもそもこういう法案を通そうとは思わない。
 支持をいただきながら、やるべきことはやっていく」
と述べた。

この報道に、韓国のネットユーザーから多くの意見が寄せられている。

「安倍晋三は本当に尊敬に値する。
 今、韓国には人気のためだけに政治をするゴミ政治家がまん延している」
「安倍は朴槿恵(パク・クネ)より政治家として優れているみたいだ」

「日本では安倍は英雄だな。
 駄目だった日本経済も復活させた。
 待望の“正常な国”が実現して正直うらやましい」
「政策の是非を離れて、支持率が行ったり来たりする韓国の政治はどうなっているんだ?」

「国民が支持しないことを強行に行うことこそ本末転倒ではないのか?」
「安倍がいかに愚かであるかを象徴する発言だ」

「日本の立場では理解できる。
 国と国の関係で要求される道徳は人間関係で必要とされる道徳とは違うからな」
「安倍は本当に素敵だ。
 自分の信念に進退をかけてまい進している」
「日本が正常な国になろうとするのは理解できる。
 しかし、韓国や中国の立場としては、そのような国になる日本を必ず阻止しなければならない」



中国の盛流と陰り



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